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暮らしのヒント

暮らしの風景スポット紹介

お菓子を通じて伝える、ポルトガルの歴史や文化

京都の西陣は、「ガシャコン」とかつて機織りの音があちこちから聞こえていた職人のまち。そんなエリアにもし住んだら、どんな暮らしが待っているんだろう? 今回は、日常をより豊かにしてくれる、魅力あふれるお店をご紹介します。

学問の神様として知られる、菅原道真を祀る北野天満宮。その大鳥居の近くにあるのが「カステラ ド パウロ」です。京都には歴史ある建物が多くあり、こちらもその一つ。築100年以上の酒蔵を改装した店内は、木のぬくもりを感じるあたたかみのある空間が広がります。

お店を営むのは、オーナーシェフのパウロドゥアルテさんと妻の智子さん。長崎の老舗カステラ店「松翁軒」で修業を積んだパウロさんが、日本のカステラをポルトガル人に広めたいと、リスボンにお店を開いたのは1996年のことです。

「リスボンの店は18年間営業して、多くのお客様に日本のカステラを広めることができたのではないかと自負しています。そこで今度は日本でポルトガル菓子の知識や歴史、文化を伝えたいという想いが芽生えてきたんです」と智子さん。こうして2015年、智子さんの故郷である京都に「カステラドパウロ」がオープンしました。

凹凸がなく、なめらかな表面が美しい同店のカステラ。その秘訣は手の動きにあるとパウロさんは言います。「窯に入れた生地を木べらで上下左右に動かして、気泡をなくす“泡きり”は、きめ細やかで弾力のあるカステラをつくるのに欠かせない重要な工程です」

また同店では、ポルトガルの伝統菓子パォンデローも販売。卵、砂糖、小麦粉を使った生地を窯で焼いたパォンデローは、カステラのルーツと考えられているお菓子です。

地方によって形や配合、焼き具合が異なるパォンデロー。ポルトガル北部のミーニョ地方は、しっかりと焼き上げた弾力のある食感。西部のベイラリトラル地方は、とろりと半熟タイプのものなど、その特徴はさまざま。2階にあるカフェでは、日本のカステラと3種類のパォンデローが楽しめる「食文化比較体験プレート」を提供しています。

「パォンデローはもともと神様にお供えするためのお菓子で、長い歴史があるもの。そんなお菓子が日本でカステラとして受け継がれたことに、私はすごく意義を感じています」と智子さん。さらにポルトガルでの経験を通じて、日本のお客さんに届けたい想いがあるといいます。「現地では、お菓子職人の方々にたくさん勉強させてもらいました。普通では教えてもらえないような、秘伝のレシピも教えてもらったり。そんな人のあたたかさに触れてきたので、私たちも、お菓子を通じて人を想う気持ちを伝えられたらと思っています」

伝統菓子が繋いだポルトガルと京都。知らなかった新しいお菓子との出合いも、暮らしの楽しみです。


■カステラ ド パウロ
京都市上京区御前通今小路上ル馬喰町897蔵A棟
TEL.075-748-0505
営業時間 9:30~18:00(カフェ ~17:00/LO16:30)
定休日 水曜、第2・3木曜日
公式サイト