路地にひしめく家々とその合間で営む個性的な飲食店やショップ。こんなところに、こんな店が! そんな発見や出合いがあるのが四条大宮~堀川五条エリアの楽しみです。京都の中心部、四条烏丸や河原町からほんの少し離れただけで、ちょっと懐かしい下町風情もあって、色とりどりの賑やかさを感じさせる――。そんなまちの雰囲気が、こだわり派の人たちを引き寄せているのかもしれません。今回は、アトリエやスタジオにぴったりな丹波口の木造平屋を拠点に、個性が光るお店を巡ります。
冷凍庫に詰まっているのは、料理のようなアイスクリーム
アートを介して人と人が行き交うような場所に。そんな想いのこもった場所が大宮駅近くのアート複合施設「kumagusuku」です。古民家を改装した1階には、中庭を挟んで間借りカフェやギャラリーがあり、小さな部屋がいくつもある2階には雑貨などの7つのショップが個性的な商品を並べています。
なかでも注目したのは1階にある「K2 EIS」というアイスクリーム店。とはいえ、ここにあるのは冷凍庫が一つ。中には野菜や花、スパイスを使ったアイスクリームが詰まっています。初めて出合う味も多いのですが、「ココナッツとグリーンチリ」「イチジクとゴルゴンゾーラ」など1つのカップに2種類が入っていて、組み合わせを楽しめるのも特徴です。店主の山下勝也さんが「料理をしているような感覚で」と話すアイスづくりは、食べたことのない味を求めてまだまだ続きます。
季節を味わい、物語を感じる“おやつ”を
「菓子屋 のな」のお菓子は、和菓子の枠にとらわれず、コーヒーや紅茶とも合って“おやつとして楽しめるもの”がコンセプト。ショーケースに並ぶ季節の上生菓子は4種ほど。和菓子は見た目と名前で季節を表しますが、食べても季節を感じてほしいとハーブや果物を使い、食感も意識しているそう。
通年で販売している「アントニオとララ」は森鴎外の小説『即興詩人』をオマージュしてつくったお菓子。黒い焦がしキャラメル餡は小説の主人公アントニオの翻弄される人生の苦みを表し、もうひとつのマンゴートロピカル餡はアントニオと出会って変化していく登場人物ララを表現しているそう。物語や季節を、見て、聞いて、そして食べて楽しむ一品です。
いつもの料理を絶品にしてくれる包丁専門店
ずらりとディスプレイされた包丁は圧巻! 「食道具竹上」は料理包丁の専門店。包丁の仕上げに当たる「調整」と「本刃付け」を行い販売しています。出刃包丁、三徳包丁など、和洋の包丁30~35種類のほか、砥石や調理道具も扱っていて、プロの料理人だけではなく、一般の人も多く訪れるそう。
和包丁は「両刃」であることが大きな特徴ですが、これは和食の美味しさを引き出すのに欠かせないと話すのは、庖丁コーディネーターの廣瀬康二さん。「食材を最大限に生かし切って、素材の味を守るのが和食ですよね。ちゃんとした包丁で切ると、切り口に勢いが出て艶が出ます。そして味がまな板に落ちません」。料理の見た目だけではなく、包丁によって味も変わるもの。「トマトをスライスするだけで立派なおかずになりますよ」と廣瀬さん。
気になるお手入れは洗った後に水分を拭き取るのがポイント。砥石で研ぐのは2~3か月に1回でOKです。絶品を作り出す包丁が、家での食事を幸せなひとときにしてくれます。
無国籍料理の酒場で、豊かな出会いを味わう
住宅街にたつ町家の柱に掲げられた小さな看板が目印。「COPPIE(こぴゑ)」は、3組の夫婦による無国籍料理の酒場です。カウンターテーブルの向こうでつくり出される料理は、季節ごとというよりも、毎日のように変化するとか。その日に食べるべき美味しい食材を、ワインや日本酒、焼酎などと合わせて、マリアージュを堪能するのがCOPPIEでの楽しみ方。ワインは、自然派ワインを中心に、グラス30種以上、ボトルで100種ほど。日本酒も小規模の造り酒屋のものを、お猪口サイズから100種以上が揃うラインナップの豊富さも魅力です。
友達の家に遊びに行くように、気軽に楽しんでほしいという思いから生まれた“酒場”。扉を開けば、食やお酒、そして人との出会いが待ち受けています。