
京都市内に店を構える包丁専門店「食道具竹上」。店内に入ると壁一面に、三徳包丁、牛刀、菜切包丁など、和洋30種類以上の包丁がずらり。さらにサイズが6寸、7寸、8寸…と続きます。「食材によって包丁を使い分けるのは日本独自の文化。包丁を通して、食の奥深さを伝えたい」と話すのは、代表取締役の廣瀬康二さん。廣瀬さんは「庖丁コーディネーター」でもあり、全国で包丁の研ぎ方講座や講演などを行って、食と包丁文化を伝えながら一人ひとりに合った包丁の提案をしています。


使い手に合った包丁選びで大切なのは、その人へ思いを馳せること。同店の利用客は、全国各地のプロの料理人だけでなく、主婦、外国人などさまざま。どんな食材を切るのか、どんな料理をするのか、キッチンのスペースはどれぐらいかなどをヒアリングし、最適な1丁をともに探します。
包丁が決まったら、最後に調整と「本刃付け」を行います。これが廣瀬さんの腕のみせどころ。刃に柄をまっすぐに取り付けてから、槌で刃を叩いて歪みを修正し、仕上げに刃を砥石で研いで鋭くします。「これをしておくことで、切れ味と持続力が増し、お客さん自身でメンテナンスもしやすくなります」と廣瀬さん。「本刃付けは、お客さんの手に商品が渡っても問題なく使えるかといった本物かどうかのチェックと、お客さんの目の前で仕上げを行って本物にするという両方の意味があります。魂を込めてお渡ししています」


同店は包丁の修理にも力を入れています。「曲がったり歪んでしまった刃を叩いてまっすぐにし、形を整えてから研ぎます」。息を吹き返したように包丁が蘇ることから、「更生修理」と呼ばれます。竹上の包丁の寿命は約20~30年と長持ち。更生修理をすれば、さらに長く使うことができます。
「切れ味のいい包丁を使うと、料理が圧倒的においしくなる」と廣瀬さん。「いい包丁だと食材に抵抗なく刃がすっと入ります。そのため食材の形を崩しません。切り口の断面がまっすぐになり、角が立つんです」と廣瀬さん。例えば、ネギを切れ味のいい包丁で切ると、繊維をつぶさず、鮮度のいい状態が長く続き、シャキッとした食感を味わえるそう。焼いたり、煮込んだり、調理するうえでも包丁の力は絶大。「切り口がきれいだと、まんべんなく火が通り、食材に味が均一にしみ込むのでおいしく仕上がります。食生活が豊かになると、暮らしも豊かになって笑顔になる。包丁は最大の隠し味です」。包丁のちからを借りて、料理をもっとおいしくしませんか。

■食道具竹上
京都府京都市下京区黒門通高辻下ル杉蛭子町238-2
営業時間:10:00-17:00
店休日:日曜
TEL:075-802-3378
公式サイト