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暮らしのヒント

インタビュー

経年変化を感じるリノベ平屋を仕事場に ― モルテマニ 米本有紀彦さん

京都市を東西に走る主要道路五条通。道幅も広く交通量も多いこの通りからちょっと中に入れば、そこは昔ながらの住宅街。車も通入れないような細い通りに沿って家が立ち並んでいます。そんな一角にある平屋をlineaがリノベーション。現在事務所として活用しているのが、米本有紀彦さんです。「MOLTEMANI(以下、モルテマニ)」というアパレルブランドを立ち上げ、現在、インターネットを中心に商品を販売しています。

―2023年6月頃から事務所として使っていると伺いました。この物件との出合いは?

米本さん:モルテマニの事業が走り出して、そろそろ京都で事務所を持ちたいと考えていたころ、lineaさんのこの物件を知りました。それで見せてもらって、素敵だ!と。住宅街で、静かに集中して仕事ができるだろうとも感じましたね。

―どういう使い方をしているんですか?

米本さん:窓際のデスクでパソコン使って仕事しながら、奥のテーブルで商品サンプルのチェックをしたりしています。

―こうしていてもほんとに静かですね。

米本さん:そうなんですよ。昼間は特に。でも夕方になったら近所の小学生が帰ってくる声がしてくるし、仕事から帰ってきた近所の方の話し声が聞こえます。そういう暮らしの音がしてきて、地域の雰囲気が感じられるのも気に入っています。

―ここにしようという、一番の決め手は何だったんですか?

米本さん:それはやっぱり、もともとの建物の雰囲気が残った内装ですね。

―築年数は不詳ですが、築80年くらいは経っているとか。耐久性を高めるためのことは施されているものの、基本的にできるだけ“そのまま”にしてあるそうですよ。

米本さん:ですよね。梁が見えたりして、建物の歴史を感じます。加えてリノベーションの際に使われた素材が好きなんですよ。入口ドアの下、床の切り返しの部分に入っている真鍮や塗り壁など経年変化するようなものを採用されていて。ずっと前からここにあって、経年変化してきている建物の部材ともマッチしています。

―「経年変化」は、米本さんのブランド、モルテマニとも共通する考えですね。

米本さん:そうなんです。僕が大切にしているのは「古き良きもの」と「今の技術で生まれた新しいもの」の共存。まさにこの空間とも重なっています。

―モルテマニを立ち上げたのはいつ頃ですか?

米本さん:2021年です。昔からファッションが好きで、家具ブランドで働いたりもしていたのですが、独立してブランドを立ち上げようとはその当時から思っていました。経年変化するものは、子供の頃から好きで、小学4年生のときに初めてデニムを買ったんですが、そのデニムの色落ちがカッコいいと感じてましたからね(笑)。モルテマニでも経年変化を感じられる素材を使っています。

―そして「職人の手仕事」も、米本さんのこだわりポイントですよね。

米本:はい。例えばこれは岡山県の倉敷帆布なんです。喬木(きょうぼく)という木を粉にして湯で煮だした染料で、染めの職人の方が20~30回、染めては色を抜いてを繰り返して着色した天然素材なんですよ。職人さんの手仕事でこれが生まれてるんです。そしてそこに銅の金具や本革の装飾がついている。これらの素材が経年変化していくんです。

―ブランドのコンセプトとリンクする空間だと、仕事もはかどりますか?

米本:ええ。やっぱり仕事をするうえで、空間は人にすごく影響を及ぼすと思うんです。どういう空間に身を置くかは大切なこと。自分の発想も豊かになるんじゃないかと感じてます。

―今後はどんな展開を?

米本さん:ゆくゆくはここでモルテマニの商品や雑貨を販売したいと考えています。この場所をお客様と繋がる場にできたら。

―通り側の大きな窓もいいですよね。外とのつながりを感じます。

米本さん:そうなんですよ。開口部が多くて、床がコンクリート土間。土足で入ってこれるので、物販もやりやすいと思います。近所の方とコミュニケーションがとれますし(笑)。

―ここに事務所を構えて数か月。仕事場ではありますが、住人のような感覚も?

米本さん:そうですね。この物件を借りる前は、この付近で知っているのは主に五条通沿いだけだったんですけど、一本中に入ってみたら昔から地元に愛されている、長く続けている飲食店や銭湯があったりする。京都の昔からの風情が感じられる場所なんだって気づきました。ちょっと歩くと、昔からの日本建築で、庭にちゃんと手入れされている松があったりするところがあったり。すごく素敵なエリアだなと思いながら、毎日仕事をしています。

■ MOLTEMANI
https://moltemani.co/